一国の財・サービスの輸出と輸入の差を表す経常収支が、一国の貯蓄と投資の差に等しいという事実に基づいて、経常収支の決定を「貯蓄行動」「投資行動」の結果に求める経済理論的な考え方。いま、ある家計が1年に得た所得を「サービスの輸出によるもの」、その家計が1年に行った支出を「財の輸入によるもの」と考えると、1年間の経常収支、すなわち「財・サービスの輸出」から「財・サービスの輸入」をマイナスしたものとは、とりもなおさず、1年間に得た所得から1年間に行った支出を引いたもの、すなわち「所得超過分」にほかならない。この「所得超過分」を家計は「貯蓄」するわけである。同様に、家計、企業、政府という3タイプによって構成される一国全体を考えた場合、家計および政府の持つ「所得超過分=貯蓄」から、企業の持つ「支出超過分=投資」を引いたものが、一国全体の「経常収支」になるわけで、この値は、いわば外国に対してなされる「貯蓄」に当たる。このとき、計画された貯蓄・投資行動によって経常収支が決まるとする考え方が「貯蓄投資ギャップ理論」である。この考え方は、国際競争力や輸入障壁の大きさによって経常収支が決まるとする通説と異なるために、日米貿易摩擦が激化した際には、この考え方を主張する日本と、経常収支不均衡を日本の輸入障壁のせいにするアメリカとが対立した。