2001年11月14日、カタールの首都ドーハでのWTO(世界貿易機関)閣僚会議で発足が決まった多角的通商交渉。ドーハ開発アジェンダ(Doha Development Agenda)、ドーハ・ラウンドなどともよばれる。08年7月の閣僚会議で、大枠合意寸前の段階で最終的に決裂し、08年内の大枠合意は断念された。09年に入り交渉再開の機運が高まり、09年7月のイタリア・ラクイラサミットの中国、インドなどを加えた拡大会合で新ラウンド交渉の10年末までの最終妥結を確認。9月にはインドで非公式閣僚会議が開かれ新ラウンド交渉の再開で合意した。また、10年妥結のための工程表も9月に作成された。新ラウンドが動き出した背景には、アメリカと対立してきたインドなどの姿勢変化があった。11月にはジュネーブで公式閣僚会議が開かれ、10年中の正式合意を目指すことを決めた。しかし、交渉そのものは、アメリカの消極姿勢などから進展していない。新興国に貿易の自由化を迫るアメリカ、途上国の利益を守ろうとする中国、インドと、従来の図式も変化していない。日本では貿易自由化を訴える経済産業省と、国内農業の保護を優先する農林水産省の間に姿勢の隔たりがあり、明確な姿勢を打ち出せていない。10年中の最終合意のためには、関税の引き下げ率などを決定する必要があり、その作業だけで半年はかかるために、実質残された時間は少なく、10年中の妥結も容易ではないとみられる。