TPP交渉は、2015年10月5日に加盟12カ国が参加した閣僚会議で大筋合意し、16年2月4日に協定文書に署名、正式合意となった。TPPの成立によって参加国人口約8億人、世界の国内総生産(GDP)の4割近くを占める経済圏が誕生する。合意は、全31分野をカバーし、工業品の関税は日本を除くと99.9%が、農業については同98.5%が撤廃された。日本については、それぞれ95%、81%(2328品目中1885品目)が撤廃となる。全参加国が協定文書署名後2年以内に議会承認などの批准手続きを行い、その完了を通告後60日で発効する。また、2年以内に全参加国が批准を完了しない場合には、域内GDPの合計が85%以上を占める6カ国以上の批准で発効できる。13年時点ではアメリカが域内GDPの約60%を占め、日本が同約18%を占めることから、この2国が重要な役割を果たすとされる。TPPの意義は、21世紀型の新たなルールの構築であり、域内のヒト、モノ、カネ、情報の移動を自由化して、「アジア太平洋地域・バリューチェーン」を作り出すことである。この民間企業を中心とした生産ネットワークの形成を、公的部門は制度づくりによって支援するのが理想であり、産業政策などの政府による市場介入をできるだけ排除するために、国有企業への補助金の廃止や低金利融資などを防ぐべきと考えられる。日本については、焦点となった農産物は、牛肉については段階的な引き下げとなった。関税率は、現在の38.5%を協定発効時に27.5%まで引き下げ、協定発効から10年で20%、16年目以降は9%となる。パイナップルでは、現在の17%の関税は協定発効後11年で撤廃される。また、日本とアメリカの2国間協議で最大の焦点となった主食用のコメについては、関税が維持された。ただし、協定発効時に年間5万トン、13年目以降7万トンの新しい輸入枠が設けられることになった。TPP全体の課題としてはタイや中国が未加盟であり、とくに今後は中国の参加が焦点の一つとみられる。日本在住の中国研究者の解釈によれば、現状の合意内容は中国が結んだ他の協定と同程度以下で安心できる内容であり、今後の中国のTPP参加に含みを持たせるものとのこと。