東南アジア諸国連合(アセアン)が、今後10年を見据えた、新たな行程表。2015年12月末に発足したアセアン経済共同体(AEC)で積み残した自由化項目の達成と統合強化を掲げる。同年11月に開催された第27回アセアン首脳会議で、クアラルンプール宣言として採択された。16~25年の目標期間に、(1)高度に統合されかつ結束した経済、(2)競争力のある革新的でダイナミックなアセアン、(3)高度化した連結性と分野別協力、(4)強靭(きょうじん)で包括的、人間本位・人間中心、(5)グローバルアセアン、という五つの柱の実現をめざす。それぞれ、概念的との指摘もあるが、その意味するところは、(1)ではモノ、サービス、カネ、熟練のヒトの移動の自由に加えて、「グローバル・バリューチェーン」への参画強化が追加された。(2)は「イノベーション」の重要性をうたったもの。(3)では「観光業とヘルスケア」が高度な連結性の対象分野として追加された。(4)は「民間部門」の役割の重視、(5)では、アセアン単独ではなく、より広い地域との共同歩調に含みを持たせている。行程表の根底にあるのは、中所得国のわな(経済が中所得国レベルで停滞し、高所得国に移行できない状態)にアセアンがとらわれないための施策である。産業構造の高度化、グローバル・バリューチェーンへの参加、これらを円滑にこなすための地域統合の促進、官主導ではなく民主導、民間企業によるイノベーションは脱出には不可欠の条件。また、アジアの高齢化を前に、サービス産業としての観光業、ヘルスケア産業の振興も重要となる。