地球温暖化の原因とされる二酸化炭素などの温暖化ガスを排出する権利を売買する仕組み。温暖化ガス排出権が売買され市場価格が決定されるメカニズムを導入することにより、世界的な温暖化ガスの削減目標達成に向けて、各国で効率的な対策が採用されることを狙いとしている。排出権取引制度には、「キャップ&トレード」(排出削減を行う主体に排出枠を設定した上で、実際の排出量との過不足を取引する方式)と「ベースライン&クレジット」(排出枠を設定されていない主体が排出削減プロジェクトを実施した場合、当初想定された排出量から削減できた量を排出権として認める方式)の二つのタイプがある。2005年から実施されている欧州排出権取引制度(EU-ETS)では、EU(欧州連合)加盟各国が発電所、石油精製所、製鉄所などの主たる二酸化炭素排出施設に対して排出枠を割り当てる(当初は無償、後に有償でのオークションに移行)「キャップ&トレード」方式が採用されている。日本では、08年10月に政府が「国内排出量取引制度」の試行を開始すると発表したが、参加するか否かは企業の自主性に任されており、削減目標も企業が自主的に決めるとされた。排出権取引制度の定着にともなうコスト上昇を懸念する企業に対して大幅に譲歩した内容であり、温暖化ガス削減に向けての効果は未知数である。