サブプライムローン問題に端を発した2008年秋の金融危機を二度と繰り返さない狙いで、10年7月にアメリカで成立した金融規制強化と消費者保護に関する法律。大恐慌後の1933年に銀行と証券の分離を定めた銀行法(グラス・スティーガル法)以来、約80年振りの抜本的な金融規制改革法と称されている。複雑怪奇といわれるアメリカの金融規制監督体制については、各監督機関の横断的組織である金融安定化監督評議会(FSOC)が創設される(各監督機関の長など10人で構成され、財務長官が議長を務める)。FSOCは、金融システム全体のリスクをモニタリングするとともに、金融システムにとって脅威と判断された大規模金融機関に対する厳格なルールを連邦準備制度に提言する役割を与えられる。また、貯蓄金融機関監督庁(OTS)を廃止して通貨監督庁(OCC)によって代替、財務省に連邦保険庁(FIO)を創設、連邦準備制度内に消費者金融保護庁(BCFP)を創設などの組織改編が行われる。次に、金融機関による過度のリスク・テーキングを抑制するために、銀行によるリスクの高い取引を制限するボルカー・ルール(ポール・ボルカー元連邦準備制度理事会議長が立案した、銀行によるリスクの高い取引を大幅に制限する規制強化策)が盛り込まれたほか、店頭デリバティブ取引への包括的な規制強化、ヘッジファンドに対する証券取引委員会(SEC)への登録義務付けなども実施される。