AIJ投資顧問(浅川和彦社長)が顧客から委託された年金資産の大半を消失した問題。AIJ投資顧問は、高利回り運用をうたって2011年末時点で94の企業年金などと投資一任契約を結び、2043億円の資産を委託されていた。しかし、12年1月に行われた証券取引等監視委員会の検査によって、受託資産の大半が運用の失敗により消失していたことが判明した。同年2月24日、金融庁は金融商品取引法に基づく1カ月間の業務停止命令を出し、3月23日には証券取引等監視委員会が強制捜査に乗り出した。6月19日、警視庁は詐欺容疑で浅川社長ら4人を逮捕した。AIJ投資顧問に運用を委託していた企業年金の大半は、中小・零細の同業者が集まる総合型厚生年金基金であった。それらの基金は、年5.5%という現実離れした高い予定利率の下で積み立て不足が膨らみ、国から預かった厚生年金代行部分まで穴をあけていたことから、高利回り運用で挽回しようとしたのである。AIJ問題は、現在の厚生年金基金制度が極めて深刻な状況にあることを露呈した。