信託の受託者が受益者(信託への投資家)に対して負う忠実義務(受益者の利益を第一に考える義務)、善管注意義務(善良な管理者の注意義務)などの責任をさす。証券市場では、年金運用に際して投資顧問会社など資産運用会社や年金基金が、受益者である年金加入者や受給者に対して負う受託者責任が重視される。慎重な専門家としての判断力を駆使して資産運用を行うことを求められるプルーデント・パーソン・ルール(prudent person rule)や、運用を通じて自己の利益を図ってはならないといった規範が確立されている。アメリカでは、1974年の従業員退職所得保障法(エリサ法 ERISA Employee Retirement Income Security Act)で、企業年金など退職給付制度の運営に当たって要求される受託者責任が詳しく規定されている。日本でも、2001年に成立した確定給付年金法や確定拠出年金法において、加入者等に対する忠実義務や利益相反行為の禁止などが規定されたほか、企業年金連合会などによる受託者責任ガイドラインが整備されている。