一般的に、外貨準備や国有天然資源からの利益などを原資にした公的資金・政府系資金を運用するファンドのこと。国富ファンドと訳されるが、政府系ファンドとよばれることも多い。近年その運用規模が急速に拡大し、IMF(国際通貨基金)によると、世界全体のSWFで2兆~3兆ドル(日本円で180兆~270兆円)と、機関投資家としての存在感・影響力を拡大させている。とくに、サブプライム問題で損失計上したシティグループやメリルリンチ、UBS、モルガン・スタンレーなどに2007年末から08年初にかけて大規模に出資したことで、プレゼンスが高まった。外貨準備を運用するSWFは、安価な労働力などを強みに輸出を増やし経常黒字を拡大させたアジア(シンガポール政府投資公社や中国投資有限公司、韓国投資公社など)に、また国有天然資源の利益を運用するSWFは、原油産出国の集中する中東(アブダビ投資庁やクウェート投資庁、カタール投資庁など)に多く見られる。欧米諸国では以前より、SWFが政治的(非経済的)な理由で自国企業に投資する可能性やリスクが、その情報開示の少なさと相まって懸念されてきた。そこで、08年6月にOECD(経済協力開発機構)がSWFの投資受け入れ国に向けて、内外無差別の原則や投資障壁の抑制などを柱とする行動規範「SWFおよび受け入れ国の方針に関するOECD宣言」を、08年10月にはIMF(加盟国でSWFを有する26カ国から構成されたワーキンググループ)がSWFに向けて、ガバナンス体制や投資政策、資金使途などの公開を柱とした行動規範「SWFに係る一般に認められた原理と慣行(採択地にちなんでサンティアゴ原則とも呼ばれる)」を発表した(いずれも強制力はない)。なお、08年半ば以降はグローバルに広がった金融危機の下で、SWFによる対欧米投資や金融機関への出資といった活動は以前ほどの勢いは見られない模様である。