主に不動産向けや公共セクター向けの優良ローンを担保に銀行が発行する債券。銀行のバランスシート上に担保資産が残ること、担保資産の適格性が失われると優良債権との入れ替えを行い担保資産の質の維持が図られること、担保資産に加えて銀行にも投資家が償還請求権を有すること、が特徴である。銀行と担保資産の両信用力で、同じ発行体の無担保社債より高格付けを得る傾向がある。ドイツは従前よりカバードボンド(現地ではファンドブリーフ債と呼ぶ)市場が大きいことで知られる。他のヨーロッパ主要国も2000年代半ば以降、関連法規制を整備し、市場規模は拡大している(10年末で2兆4000億ユーロ)。アメリカでも証券化を補完・代替する資金調達手段として金融危機後、注目を集めている。オーストラリアも11年に解禁した。関連法規制が未整備な日本では発行実績がないが、11年開催のカバードボンド研究会(事務局は日本政策投資銀行)は、金融機関の資金余剰が中長期的に維持されるとは限らず、金融機関の中長期資金調達の多様化のためにカバードボンド導入を検討すべきとした。課題の一つは、既存の倒産法制との整合性である。