欧州委員会が2011年9月公表のEU指令案で提示した、EU(欧州連合)域内の金融取引を対象に行う課税のこと。1970年代後半にアメリカの経済学者ジェームズ・トービンが為替投機抑制を目的に提唱した外国為替取引に対する課税案に鑑み、トービン税(Tobin tax)とも呼ぶ。ヨーロッパでは2008年9月に起きた金融危機対応として金融セクターに多額の公的資金が投入され、それがヨーロッパ各国の財政悪化を通じたソブリン危機の一因とされ、金融セクターに課税や負担金を求める議論が高まった。株式、債券(証券化商品含む)、短期金融市場商品、投資ファンド(投資信託含む)、デリバティブなど、EU域内の金融取引の85%を対象に、最低でもデリバティブ取引には0.01%、それ以外には0.1%を課税し、年間570億ユーロの税収を見込むとする。ただし、EU域外への金融取引の流出や、市場流動性の減少による相場変動性の拡大、混乱が続くEU経済に対する逆効果などの懸念から、イギリスやスウェーデンなどが否定的であり、指令案成立に必要な連合理事会の全会一致の承認は必ずしも容易ではない。G20でも取り上げるべきとの声が一部の国からあるが、11年11月のカンヌサミットでは合意に至っていない。