投資信託の受益者(投資家)が、自分の保有する投資信託にかかわる「投資期間全体の累積分配金を含む累積損益」を把握しやすくするように、投資信託の販売会社に対し、一定の計算方法に基づいた累積損益の個人投資家への通知を義務づける制度。同制度では累積損益をトータル・リターンと定義する。2012年12月に金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」が発表した最終報告に導入方針が盛り込まれた。同ワーキング・グループは12年1月に金融担当大臣が金融審議会に対して、国民が資産を安心して有効に活用できる環境整備を図るために行った諮問(投資信託については、国際的な規制の動向や経済社会情勢の変化に応じた規制の柔軟化や一般投資家を念頭においた適切な商品供給の確保等)を受けて設置された。トータル・リターンの計算方法としては
「(計算時点の評価金額+累計受取分配金額+累計換金金額)-累計買付金額」
が基本となる。近年、一見すると高頻度・高分配だが、元本の払い戻しを伴うことで評価額そのものは減少していく投資信託の普及が、個人投資家の間に進んだことなどが、制度導入の背景にある。