中央銀行や政府が、変動相場制の下で為替相場を誘導したり、固定相場制の下で自国通貨の主要国の通貨に対する為替相場を安定化させたりするために、外国為替市場で外貨建て金融資産(一般に外貨準備[official reserve]とよばれる)を対価に自国通貨を売買すること。日本の場合は、日本銀行が財務大臣の代理人として外国為替資金特別会計の外貨を使って市場介入を行っている。市場介入には、外貨の売買にともなう金融市場の需給変化を自国通貨建て金融資産の売買オペレーション(公開市場操作)によって相殺する不胎化された介入(sterilized intervention)と、金融市場の需給変化を相殺しない不胎化されない介入(nonsterilized intervention)に分類される。日本銀行がドル買い円売り介入を東京市場で行うと、その決済にともなってドル預金が売り手の市中銀行から政府に引き渡されると同時に、日本銀行を経由して政府から円代金が市中銀行に支払われ、マネタリー・ベースが増加する。具体的には、ドルを売った市中銀行が持つ日本銀行の当座預金に円代金が振り込まれる。市中銀行の日本銀行への当座預金は、準備預金制度に基づいて、その銀行の預金残高で決まる最低金額以上の平均残高を維持する必要があるが、当座預金には付利されないため最低限度を上回る預金を保有するインセンティブはない。当座預金残高が過剰となった銀行は、ほかの銀行に資金を貸し出して運用収入を得ようとするため、金利の低下圧力が働く。このように外国為替市場へのドル買い介入は、円金利を低下させるように働くが、これが不胎化されない介入である。
市場介入による円金利の上昇ないし下落圧力の発生が望ましくない場合には、日本銀行はレポ市場、FB・TB市場(短期国債市場)などで円の金融資産を売買するオペレーションを行う。たとえばドル買い介入の円金融市場への影響を相殺するためには、日本銀行が介入と同じ金額の円資産を金融市場で売却する。この結果ドル買いの決済による民間銀行の日本銀行当座預金の増加が、円金融資産売却の決済による当座預金の減少で相殺され、マネタリー・ベースは不変にとどまる。これが不胎化された介入である。一般に不胎化されない介入は、マネタリー・ベースを変化させ、国内金利の変化を発生させるので、その効果は不胎化された介入より強い。