日本の金融機関、企業、個人などが、ドル建ての資産を保有していると、将来ドルの対円相場が下落した場合に損失を被る可能性がある。ある人が、海外旅行の使い残しの1000ドルの旅行小切手を持っているとしよう。仮にこの旅行小切手が旅行前に1ドル当たり110円で購入され、ドルが旅行中に円に対し下落し1ドル当たり100円になったとすると、この人は旅行小切手を銀行に売却することで1万円の損失を被る。これとは逆に、もしドルが円に対し上昇し1ドル120円になったとすると、旅行小切手の売却により、この人は1万円の利益を得ることになる。またドルを借りている企業の場合は、ドルが円に対し下落すると、返済に必要なドルの円換算額が減少し利益を得る。これに対しドルが円に対し上昇すると、この企業は損失を被る。このように外貨建ての資産や負債を保有していると、自国通貨の為替相場の変動により利益や損失が発生する。こうした為替変動にともなう利益や損失が発生する可能性は、為替リスクとよばれている。銀行、輸出入業者や海外投資を行う機関投資家などは目的に応じて、このような為替変動リスクを利用して収益を上げようとしたり、為替変動リスクを避けるための金融取引(「カバーを取る」ないしは「ヘッジする」とよばれる)を行ったりしている。