円キャリートレードとは、単純には低い円金利で資金を調達し、高金利の通貨で運用することで利益を狙う取引であるが、実際には先物為替などの金融派生商品を用いて実質的に同じ取引をすることが多い。日本のデフレが長引く中で超低金利が持続され、低利の円を借り入れてオーストラリアドルなどの高金利通貨で運用する動きが活発化し、円安持続の一因と見られている。しかしこの取引では、円相場が円安傾向で安定していることが前提となるため、予想外の円高が発生すると大きな損失を被る。ヘッジファンドや機関投資家は、1997年春以降の円安局面において円借り入れドル運用の形のキャリートレードを拡大し、大幅な金利差と円相場の下落で大きな利益を上げていたとみられる。しかしLTCM(アメリカの大手ヘッジファンド)の破綻により、ヘッジファンドに対する信用不安が拡大したことなどから、円キャリートレードを続けることが困難になった。キャリートレードをやめるためには、ドル資産を売却し円を買い入れて、それで円借り入れを返済する必要がある。これを多数の投資家が同時に行うと、急激な円高ドル安が発生する。98年10月7~8日には変動相場の歴史でも最大級の2日間で13%もの円高となり、巨額の損失を被ったファンドが発生したと報道された。