自国通貨が下落したときに、貿易・サービス収支が改善するための輸出入需要の弾力性に対する条件。自国通貨が下落した場合に、貿易・サービス収支が改善するためには、輸出数量の弾力性と輸入数量の弾力性がある程度以上高い必要がある。輸出入数量の弾力性は、輸出入の供給と需要の双方の弾力性に依存しているが、(1)輸出供給と輸入供給の価格弾力性が無限大(自国と外国ともに十分な輸出余力があり、それぞれ輸出国の通貨で表示した一定価格で輸出を増加することが可能な場合)で、かつ(2)当初貿易・サービス収支が均衡している場合には、マーシャル・ラーナー条件とよばれる次の条件が、自国通貨切り下げが自国通貨建てで表示した貿易・サービス収支を改善させる必要十分条件となる。
[輸出需要の弾力性+輸入需要の弾力性>1]
この式を直感的に説明すると、輸出入の需要弾力性がゼロの場合には、1%自国通貨が下落すると、輸出金額は不変にとどまる(輸出価格、輸出数量ともに一定)一方、輸入金額は1%増加し(輸入価格が1%上昇するが輸入数量は一定)、貿易・サービス収支は輸入金額の1%分だけ悪化する。収支が改善するためには、自国通貨下落によるこの1%分の収支悪化を相殺する以上の輸出数量の増加と輸入数量の減少が必要なため、輸出数量の弾力性と輸入数量の弾力性の合計が1を超える必要がある。