トービン税とは、国際的な金融取引に対して低率の課税をしようという税制であり、投機的な国際的な資金移動を抑制して、国際金融市場の安定性を目指したものである。ノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・トービンが提唱したことから、この名前がある。通貨取引課税を導入することによって、行き過ぎた通貨取引や為替相場の乱高下を抑制しようというものであるが、投機的な金融取引とそうでない金融取引を区別することは難しく、この税制が導入されると、国際的な金融取引自体が収縮してしまうという懸念がある。また、一部の国だけがトービン税を課すことになると、資金はトービン税を課さない国に移動し、タックスヘイブンと同様の問題をひきおこしかねない。タックスヘイブンの問題とは、課税を免除することによって金融機関を誘致しようとする国家の政策が資金移動にゆがみをもたらす現象である。世界中のすべての国や地域で一律に同率のトービン税を課税することができれば、この問題は生じないが、こうした国際的な協調行動を期待するのは難しい。