団塊の世代(1947~49年生まれの人たち)でも一番多いとされる47年(昭和22)生まれの人たち(約300万人)が60歳定年を迎える年が2007年であり、彼らの保有する暗黙知(勘や直観、個人的洞察、経験に基づく知識・ノウハウ)としての技能・技術が退職によって活用できなくなる可能性を危ぐして「2007年問題」と呼ばれた。その背景には、団塊の世代のような仕事熱心かつ比較的安価であった人材を国内で大量に採用することが難しくなったという事情があった。ただし、過去に暗黙知であったものが将来にわたって暗黙知のままとどまるわけではない。実際、暗黙知は(情報技術[IT]などの助けを借りつつ)大勢の人々の絶え間ない試みによって刻々と理論化され、形式知(言葉や文章で表現できる知識・ノウハウ)化され多くの人々に共有されていき、それらの形式知に基づいて新たな暗黙知が形成される。したがって、既存の暗黙知の喪失をやみくもに危ぐすることは危険であるともいえる。