経済成長めざましい中国に対して台頭した警戒論。2001~02年は中国への外国投資急増、中国からの輸出増大が経済摩擦を引き起こし、貿易収支の赤字化、中国企業との競争による自国産業の崩壊と雇用喪失などへの不安が、脅威論を生んだ。日本でも、製造業の中国進出による産業空洞化と雇用機会喪失が心配されたが、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国は経済発展のレベルでは直接の競合関係にあったため、その影響はさらに深刻であった。中国の台頭に対し、ASEANはAFTA(ASEAN自由貿易地域)で結束、域内関税率を低くして域内経済活動を有利にし、また、域外関税を調整して中国への移転を防いで競争力を保つ方針を打ち出した。ただし、脅威論は必ずしも域内の共通認識ではなく、マレーシア、シンガポールは、中国企業の投資を期待し、補完関係を強調した中国非脅威論を展開した。