ある地域主義で生じた貿易投資の自由化で得た利益を、域外国すべてに対しても適用する考え方。APEC(アジア太平洋経済協力会議)の経済連携の基本となる。山澤逸平元一橋大学教授によれば、APEC参加希望国の参加をすべて自由にすることではない。参加をすべて自由にしても、地域統合が実際に経済効果がない場合があるからである。現在の加盟国は、ASEAN+3からラオス、ミャンマー、カンボジアを除き、アメリカ、オーストラリア、台湾、メキシコ、チリ、ロシアなどを加えた21カ国・地域である。開かれた地域主義の考え方は、地域の経済連携により参加国の利益を追求するAPECと、世界貿易の自由化によりグローバルレベルでの利益をめざすWTO(世界貿易機関)の理念を矛盾なく説明できる。こうした地域の経済連携に加えて、2国間の自由貿易協定(FTA)が脚光を浴び、三つの関係の矛盾を問う声があがっている。これに対して、建前上は、域内・域外を問わない無差別適用が望ましいとする論者が多い。しかし、実際上はNAFTA(北米自由貿易協定)のように、アメリカ、カナダ、メキシコの自由化による利益に限定した方が経済上は効果的であるとの結果が出ている。APECは開かれた地域主義をとり、NAFTAより緩い地域統合体を提唱している。その一方で、アジア地域としてはより経済効果が高い、地域を限定したASEAN+3の強化が進められている。アメリカが参加するAPECは、近年その影響力が弱くなりつつあるが、再強化の動きもある。