同じ財が地球上のすべての人に同じ量の効用を与える財のこと。国際機関である世界銀行は、この考え方に立脚すれば、地球公共財の提供をその役割とすると考えられる。2001年の9.11テロの根本原因を貧困問題に求める考え方がある。つまり、貿易の自由化、グローバル化が所得格差の拡大を生み、その恩恵にあずかれず取り残された人々が貧困層となる。テロリストは貧困層を守るために活動し、その行動を貧困層が支持する、との論法である。この考えに立てば、世界銀行が最貧国を支え、貧困層の減少に役立てば、彼らを支持母体とするテロリスト活動は減少し、その結果、アメリカの治安はより安全になり、世界全体の治安維持にも役立つとの見方もできる。当時、アメリカのブッシュ政権は、9.11テロの発生前には、世界銀行の役割について包括的である必要はなく、より限定した役割を期待し、世銀の包括的役割の推進者であるウォルフェンソン総裁(当時)の更迭、世銀への拠出金削減も検討した。しかし、テロ発生後は、一転して世銀の包括的役割とテロリスト活動の温床となる貧困層に向けた貧困削減政策の支持を打ち出し、援助関連予算の倍増計画を発表した。テロ以前、パキスタン政権の政策の不健全性を理由に不適切とされた世銀のパキスタンへの援助も、テロ以後は地球公共財の概念によって、援助実行の運びとなった。