農村に余剰の労働力があれば、工業化に際して企業は生存水準(人が生きていくのに必要な賃金)で労働力を無限に雇うことができるが、工業部門が発展し、農村の余剰労働力がなくなると、生存水準の賃金で労働力が確保できず、賃金が上昇を始める。この雇用転換点のこと。イギリスの開発経済学者、アーサー・ルイス(1915~91)が提唱した。 13億の人口をかかえる中国は、安い賃金で労働力を無限に雇用できると思われていたが、広東省の省都、広州市の賃金は2003年ごろから大幅に上昇を始めた。03年の最低賃金、月510元は、05年に684元、07年に780元、08年に860元へと上昇している。これをみると、広州市が転換点を過ぎたのは明らかなようであり、中国においても、安価な労働力が無限に確保できるわけではないことが示されたといえる。ただし、転換点を過ぎたのは、中国全体ではない、という点も留意すべきである。