タイのチャチェンサオ、チョンブリ、ラヨン3県にまたがる東部臨海開発計画の中で、ラヨン県マプタプットで開発された工業団地。東部臨海開発計画には日本が深く関与しており、産業基盤整備のための16件の事業に対して27本の円借款を実施し、貸付承諾総額は1988~93年で1787億6800万円におよぶ。マプタプット開発は、重化学工業基盤の整備を目指して、工業港と工業団地が建設された。工業港には多目的バース1と流体貨物バース2が建設され、工業団地は380ヘクタールが造成され、インフラが整備された。マプタプット工業団地にはサイアム・グループなど、多くの地場資本も投資している。マプタプットでは96年ごろに近隣住民が異臭の苦情を訴えるなど、公害が問題化していた。2007年10月には地域住民が行政裁判所に行政訴訟を起こし、憲法による環境保護規定を満たしていないとして、09年12月、中央行政裁判所は石油化学などの64事業について最終的に事業の凍結を行った。10年10月には64件の事業計画の再開が許可されたが、環境対策は当初から先進国仕様で臨む対応が必要であるという意見があり、経済開発計画を実施する場合に、どの経済主体がどの時点で環境対策を施すべきかが検討課題として浮き彫りとなった。