2010年3月に発表された、マレーシアの11年~20年を期間とする長期経済政策。政府は中所得国の罠(中所得国のレベルで経済発展が停滞し、高所得国になれない状況)にあるとの認識のもと、NEMの構築によって先進国入りを目指す。掲げる目標は、高所得、持続性、包括性の三つである。このモデルは、途上国が経済成長により高次の経済レベルに移行するには、大量の投資によるインフラ整備や工業化の促進という「大きな一押し」を必要とする、と考えるビッグプッシュ政策(ビッグプッシュモデル)の具体化である。戦略的開発イニシアチブとして、民間部門を重視し、競争環境を高め、透明性を増し、知識基盤インフラを構築し、成長の持続性を確保する。NEMは七つの特徴を持つ。第1に、イノベーションによる高付加価値化により生産性を向上させる。第2に、公共投資より民間主導による成長を目指す。第3に、中央集権的な計画経済よりは地方分権的自立を求める。第4に、産業クラスターと経済回廊を基盤とした経済活動を目指す。第5に、高付加価値を発展させる企業家精神を可能とするイノベーションとリスクテーカーを支持する。第6に、これまでのアメリカ、ヨーロッパ、日本中心の輸出市場からアジアと中東の取り込みを目指す。第7に、熟練プロフェッショナルを育成、招へいする。また、革新を進める環境整備として、特殊スキルへのアクセスの改善、知的財産保護の確保、グローバルスタンダードへの接近の強制などを政策手段とする。産業の規模の拡大構築と特化のための生産ネットワークの構築という目的に対して、空間経済学(特定の地域での産業集積などを分析する)による回廊を基盤とした発展を促進し、地域間の競争を促進し、産業クラスターを形成し、バリューチェーン・ネットワークを形成する。