“萌(も)え”は“燃え”るに通じ、趣味嗜好や興味感覚への強いこだわりや傾倒ぶりを表し、対象に感情移入したマニア層が消費を主導する市場。同好マニア同士が互いに相手を“お宅”の二人称代名詞で呼び合うことに由来してオタク市場としてもくくられ、オタク系消費者が集まる街、東京・秋葉原が「アキバ」のサブカルチャー・ブランドでにぎわう。野村総合研究所はコミック、アニメ、芸能人、ゲーム、組み立てパソコン、AV機器、携帯型IT機器、自動車、旅行、ファッション、カメラ、鉄道の12分野をマニア消費市場として、2004年のオタク層の人口を延べ172万人、消費規模を4110億円と推計。矢野経済研究所「『オタク市場』に関する調査結果2011」では、10年度の市場規模を、16のカテゴリーに分け、電子コミック540億円、同人誌700億円、ライトノベル316億円、フィギュア293億円、アイドル557億円、コスプレ衣装412億円、オンラインゲーム2994億円、AV(アダルトビデオ類)554億円などとしている。日本のコミックやアニメに対する関心は世界に広がっており、フランスでは1999年から萌え系コンテンツのフェスティバル「ジャパン・エキスポ」が人気を博している。またアニメやゲーム系のコンテンツ制作会社が新興株式市場で“萌え銘柄”ともてはやされる現象も起きている。そびえ立つ煙突群や闇夜のシルエットなど工場景観に心情を傾ける「工場萌え」や、送電鉄塔、ダム水門などの産業構造物を偏愛する新種族も現れ、工場地帯を観光資源化するビジネスも動き出している。