ナノは10億分の1を表す単位。ナノメートル(100万分の1ミリ)の超微細な世界で原子や分子を操作し、加工応用する技術でナノテクと略称される。新素材、IT(情報技術)、バイオ、環境など、幅広い産業発展に不可欠の基盤技術。カーボンナノチューブ(CNT 筒状炭素分子)やフラーレン(球状炭素分子、C60など)、カーボンナノホーン(円錐状炭素分子)が優れた材料特性を持った新素材として脚光を浴び、量産化技術の確立が急がれている。リチウムイオン電池負極材の導電添加剤に使われる多層CNTの2006年世界生産量は271トンで、日本メーカーが48%のシェアを占める(三菱総合研究所集計)。リン脂質でできた、粒径が数10~100ナノメートルの微小カプセルであるリポソームは、薬を患部に集中投与する薬物送達システム(DDS ; drug delivery system)の基盤技術として注目が高い。アメリカでは03年12月に成立した21世紀ナノテクノロジー研究開発法で取り組みが加速され、国家ナノテクノロジー計画(NNI ; National Nanotechnology Initiative)により、12会計年度に21億ドルが予算要求されている。欧州連合(EU)は02~06年の期間に13億ユーロ以上を研究開発プロジェクトに投入し、日本では第3期科学技術基本計画(06~10年度)で重点推進4分野の一つに位置づけられた。ナノテク製品の性能評価法などに関する規格作りや人体への安全性など環境影響のリスク評価に向けた取り組みも動き出している。