ワクチンの研究開発から製造販売までを担う医薬事業分野。ワクチンは、毒性を弱めたり無毒化したウイルスや細菌などの病原体を、体内に注入(接種)するなどして抗体を作り、免疫力をもたらす感染症予防治療の生物製剤。世界市場規模は6600億円で、アメリカ1650億円、日本600億円と推計される(アメリカのInstitute of Medicine National Academiesのレポート、2003年)。日本では、新型インフルエンザや多剤耐性菌の脅威阻止など、社会的ニーズを反映して、国内供給体制の不備を克服する動きが急務とされる。(1)国内生産が中小規模の事業体に委ねられる業界構造(大手製薬企業では武田薬品のみが製造)、(2)国際基準と異なる国内独自基準による承認審査(輸入ワクチン導入の遅延)、(3)少子化に伴う小児向けワクチン市場の縮小、などの問題を抱えて、必要なワクチンが提供されない日本の後進状況に警鐘が鳴らされている。厚生労働省は、07年3月に「ワクチン産業ビジョン」をまとめて、安定供給体制を確立する構造転換策を示した安定供給体制を確立する構造転換策を示した厚生労働省は、近年世界的な大流行(パンデミック pandemic)の懸念が高まっている新型インフルエンザの発生を想定し、国内で64万人が死亡すると推計。3000万人分の確保を目標とする大流行前ワクチンの臨床試験を、08年から開始。新型インフルエンザワクチン接種事業を、09年から始めた。