ゲノム(genome)は遺伝子(gene)と染色体(chromosome)から合成された造語で、生物種ごとに固有な遺伝情報全体を指す。人間のゲノムがヒトゲノムであり、ゲノムビジネスとは、構成単位の4種類の塩基と呼ばれる化学物質30億個の配列が、2000年にほぼ解読されたことにより広がる事業領域。微生物種の集団から有用遺伝子を探索するメタゲノム解析の研究も動き出している。人の体内で作り出されるたんぱく質の構造と機能を解明するプロテオミクスも注目され、主要なたんぱく質の3分の1(約3000種)を対象に、成果の特許取得を目指す産官学の「タンパク3000プロジェクト」(5年間総額578億円)が02年度から取り組まれた。塩基配列の意味と機能を解析し、どの部分にどんな働きをする遺伝子が存在するのか(3万~4万あると判明)を解明することにより、(1)毒性・副作用の解析(トキシコ・ゲノミクス)を踏まえて新薬開発に役立てるゲノム創薬、(2)SNP(一塩基変異多型 遺伝子中の塩基一つのみが異なること)の発見に基づき、個体差や体質に合わせて副作用のない薬効をもたらすファーマコジェノミックス及びテーラーメード医療(オーダーメード医療)などが期待されている。アメリカでは2000年に遺伝子診断薬が承認されたが、日本でも07年2月に承認申請が出され、遺伝子診断技術の標準化プロジェクトが進行中。ゲノム解析装置や、DNAチップ(遺伝子やDNA断片の識別に用いられる素子)のような製品とともに、リボ核酸(RNA)による危険遺伝子の発現を抑える生体メカニズムであるRNA干渉(RNAi)を応用した医薬品開発や、ITと融合した分析技術として、バイオインフォマティクスも注目される。