技術のシーズとニーズの両面にわたる的確な理解を経営戦略に生かし、成果をあげる手法。工学と経営学の知識・ノウハウを融合して体系付けられる。もともとは、1960年代にアメリカの宇宙探査プロジェクト「アポロ計画」から出た概念とされる。先端技術を事業化して利益に結実させるには、魔の川(技術の確立に至るまでの障害)、死の谷(商品化に至るまでの障害)、ダーウィンの海(市場競争の壁)、キャズム(chasm 顧客層の断絶)の困難とリスクを越えなければならない。これには、技術系の人材に経営感覚を養わせ、また高度な技術洞察を経営に反映し、技術力の優位を事業競争の優位に導く戦略的対応が求められる。90年代のアメリカの製造業復権に貢献したマサチューセッツ工科大学(MIT)や、スタンフォード大学などのMOT人材教育コースの隆盛(約300校に設置)にならい、日本でも2002年以降、大学を中心に民間教育会社も加わり、開設が活発化した。経済産業省では、産業競争力強化の観点から、02年度より5年計画で「技術経営人材育成プログラム導入促進事業」を推進。08年までに年間1万人のMOT人材を養成できる体制づくりに取り組み、06年度は技術経営プログラム開発事業、技術経営研究事業、実践的MOT研修導入促進事業の実施機関として、大学18件、民間教育機関5件の計23件を選定している。ただし、入学者の減少傾向など、志望者の現実的なニーズを把握しきれていない状況もうかがわれる。