特定分野に関連した専門企業群、高等教育機関、研究所、ベンチャービジネスを育成するインキュベーション(ふ化)施設、金融会社、業界組織など、多様な役割主体を特定地域に配置し、相互間の協力と競争によるシナジー効果を増大させて、経済発展を牽引(けんいん)する高度な産業集積。アメリカの競争戦略論の大家で、ハーバード・ビジネス・スクール教授のマイケル・E.ポーターが示した概念。クラスターは、ブドウなどの房を意味する英語であり、密に群れつながる状態を表す。アメリカのサンフランシスコ郊外にIT(情報技術)産業が集積した、シリコンバレーが成功モデルとして知られる。日本では神戸市沖ポートアイランドの神戸医療産業都市に、14の中核施設、200以上の医療関連企業が進出している。近年は、イギリス、ドイツ、フィンランドなどでも、産業競争力の強化策として政策的に形成が進められており、中国では、北京市中関村ハイテクパークが、「中国のシリコンバレー」として隆盛を築いている。日本でも、1990年代後半以降の地域産業空洞化の懸念を背景に、経済産業省が2001年度から産業クラスター計画と名付けた地域産業活性化政策に取り組み、北海道スーパー・クラスター振興戦略(情報・バイオ分野、300社16大学)など、全国で19プロジェクトを展開し、6100社と250大学が参加した。11年度から第3期(~20年)に入り、推進してきたプロジェクトの民間・自治体などを中心とする地域主導型クラスター活動への移行が進められている。文部科学省が、02年度から取り組んできた地域の知的資源振興を目指す知的クラスター創成事業(第1期はとやま医薬バイオクラスターなど18地域、第2期はさっぽろバイオクラスター構想“Bio-S”など6地域)は11年度より地域イノベーションクラスタープログラムとして関連施策と統合されており、政策連携による成果の充実が求められる。クラスター間の国際交流面では、日本貿易振興機構(ジェトロ)が支援事業を展開している。