個人発明家や中小企業から特許権を買い集め、保有特許を利用した製品の普及を見計らって大企業にライセンス契約を迫り、応じなければ侵害訴訟を起こして賠償金や和解金を得ようとする事業者。1991年にインテルの顧問弁護士だったPeter Detkin氏が初めて用いた用語。トロールは、北欧の神話に登場し、王女をかどわかしたりする怪物。パテントパイレーツ、パテントパラサイトなどの類語もある。自身は生産設備を持たず製品化しないため、クロスライセンス方式(特許の相互使用)による解決策が通用しないなど、標的企業の特許戦略に多大な脅威を及ぼし、敗訴した場合には販売差止命令のリスクを伴うことから、製品戦略上も致命的なダメージとなる。アメリカでは、特許法改正で権利期間の開始を特許の成立日から出願日に改め(95年)、特許出願の公開制度を採用(99年)するまで、出願後意図的に公開を遅らせて、当該技術が広く行き渡った段階で権利行使を求めるサブマリン特許(潜伏特許)が問題になった経緯もあり、特許の権益をめぐる訴訟はお家芸の観がある。代表的な事案の一つに、携帯通信端末「ブラックベリー」の特許訴訟で6億1250万ドルの和解金が支払われたケース(2006年)がある。日本では深刻な状況が現れず、むしろ04年の改正信託業法施行で特許権の信託が解禁され、ライセンス契約や侵害訴訟のアウトソーシング市場の動向が注目されている。