気温、湿度、雨、雪、霜、雹(ひょう)、雷、風、波の高さなど、気象条件の変動による経済損失を補償する金融派生商品(デリバティブ)。ART(Alternative Risk Transfer)と呼ばれる金融と保険を融合したリスクヘッジ技術が駆使される。自然災害による実際の損害を査定して保険金が支払われる異常気象保険と異なり、設定条件が現実になれば自動的に補償される。農作物、ビール、エアコン、衣料品、レジャー施設、博覧会、競技会、ゴルフ場、航空輸送、電力・ガスなどの、収益が天候に影響を受ける事業でリスク回避を目的に利用が広がっている。1997年にアメリカの総合エネルギー企業エンロン(2001年倒産)が開発し、日本では三井海上火災保険(現三井住友海上火災保険)の総合スポーツ用品量販店向け少雪対策商品として1999年に登場した。異常気象が起きやすくなっている傾向を背景に、想定元本(最大補償額)ベースの国内市場規模は急速に膨らんでおり、エネルギー関連企業の参入や、リースと組み合わせて売り上げや価格変動リスクを補償する天候リースなど、多様な商品開発が進められている。地球温暖化の進行から、国や地域レベルの広範囲な気温変化を指標にした「気象変動リスク」にも対応商品が現れている。東京金融先物取引所(現、東京金融取引所)が2006年に気温対象の天候デリバティブを上場する計画は、需要の季節変動から見送られたが、金融派生商品に対して事前承認制度を撤廃する金融庁の上場規制緩和策で、再び上場が検討されている。台風や地震など、大規模自然災害の経済損失に対する保険金支払いリスクを債券化して、資本市場で取引するCATボンド(CATはcatastrophe[大災害]の略)の発行も増大している。