中国が誇る世界最高地を走る鉄道。中国語では青蔵鉄路。青海省の省都・シーニン(西寧)とチベット自治区ラサ(西蔵・拉薩)を約26時間で結び、総延長1956kmのうち、標高4000m以上の部分が965kmに及ぶ。チベット高原の山岳パノラマを望むタングラ(唐古拉)峠の標高は5072mで、南米アンデス高原を走るペルーレイル(古都クスコとティティカカ湖畔のプーノを結ぶ路線にあるラ・ラーヤ峠4319m)を抜いて世界一。標高2000m級のシーニン~ゴルムド(格爾木)間814kmは1958年に着工し、79年に完成(84年営業運転開始)していたが、ゴルムド~ラサ間1142kmは第10次5カ年計画(2001~05年)の4大プロジェクトに位置付けられ、沿海部と内陸部の発展格差を是正する西部大開発の目玉として01年6月に工事を再開。06年7月1日に開通し、07年7月に本格営業を開始した。総投資額は約330億元(約4800億円)。沿線の自然環境保護対策に15億4000万元(約223億円)を投入し、高地運行に対応してアメリカのゼネラル・エレクトリック社製ディーゼルエンジンや、カナダの航空機メーカー・ボンバルディア社の車両など、先進技術を導入している。中国31省、自治区、直轄市のうち、唯一鉄道がなかったチベット自治区に鉄道網がつながり、観光需要の増大による経済効果が期待され、05年のチベット観光客180万人、観光収入19億3000万元が、08年にはそれぞれ220万人、22億元となっている。06年3月に開通した敦煌鉄道(甘粛省敦煌~柳溝間169km)とゴルムドを結び、ラサを起点に、支線をインドとブータン国境のドモ(亜東)まで延長する計画も示されている。