低騒音・低振動で直線運動をするリニアモーターを利用した新しい交通手段。次世代の大都市間長距離および大都市圏内近距離輸送の活路として期待されているが、建設コストが高い難点もある。日本では超電導磁石方式による鉄道総合技術研究所(JR総研)のマグレブ(magnetic levitation 磁気浮上の略)が1962年に研究開発を始め、97年度から本格的走行実験を開始し、鉄道の最高速度(有人3両編成で時速581キロ)を記録している。JR東海を中心に、山梨リニア実験線(18.4キロ)をそのまま一部転用して東京~大阪間を1時間で結ぶリニア中央新幹線構想(総事業費8兆~10兆円)が推進されており、2007年には実験線を42.8キロに延伸する計画と25年に開業する目標が示され、08年には、南アルプスを貫通する直線ルートを含む、3ルートを建設可能とする地形・地質調査結果がJR東海から国土交通省に報告された。国土交通省の交通政策審議会中央新幹線小委員会(国土交通省の諮問機関)は10年12月に、想定3ルートのうち経済効果が最も高い「南アルプスルート」採択の中間取りまとめを公表。05年の愛知万博会場へのアクセス路線として利用されたリニモ(東部丘陵線、名古屋市東部~豊田市北部間9キロ)は常電導磁気浮上式リニアモーターカー(HSST High Speed Surface Transport)が実用化され、海外では、中国・上海市の中心部と浦東国際空港を結ぶリニア鉄道(33キロ区間、最高時速430キロ、所要時間約8分、総事業費約100億元[1500億円])が03年10月から運行している。ドイツが開発し、12年度完成予定で建設中だったトランスラピッド(ミュンヘン国際空港~ミュンヘン中央駅間の37.4キロ)は、建設費の高騰から08年3月に建設中止が発表された。