農林業には二つの外部効果がある。化学肥料や農薬の過度な投入が環境に負荷を与え、ほかの主体に好ましくない影響を与えるマイナスの外部効果と、生産・貿易が持続可能性をもって適正に行われ、農林業的自然が保たれることにより保健・休養や国土保全など他の主体に好ましい影響を与えるプラスの外部効果である。特に、プラスの外部効果として、人間の生活を安定・向上させる以下のような多面的公益的機能があげられる。(1)雇用機会の提供、地場産業・地域購買力・地域社会の維持、過疎の防止など地域経済維持機能。(2)治水治山費用の節約、防災・定住条件の維持向上、国土資源の維持管理、農林業的自然・田園景観の保全など国土・環境保全機能。(3)「労働」や「生命」に関する教育機会の提供、人間性回復・レクリエーション・リハビリテーションの機会の提供など人間教育機能。(4)「民族」的(風土適合的)・人間的な「暮らし方」や「生き方」の継承媒体、民俗の継承媒体など伝統・文化継承機能。こうした価値は価格化されないし、農産物価格にも反映されていない。国民はこの便益を受け取るが、報われない価値のコストを農民だけが負担している。