販売価格が生産費を恒常的に下回っている作物を対象にその差額を販売農業者に交付する制度。農業経営の安定と国内生産力の確保を図り、食料自給率の向上と農業の多面的機能を維持することを目的とする。2009年秋に民主党政権が発足したことに伴い自民党政権下の農業政策が大きく転換されたが、その核となるのがこの制度の導入である。この制度は原則的に、経営規模を要件とせず、生産数量目標に従うという条件はあるものの、交付対象者を限定しない。10年度にモデル事業が実施され、11年度から本格的に実施される。11年度の事業は内容・予算規模とも前年度に比べて著しく拡充した。その主な点は次のとおりである。(1)10年度はコメのみが戸別所得補償の対象とされたが、11年度ではコメに加え、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょ等の畑作物まで交付対象が広がった。(2)麦、大豆等の畑作物については面積払いだけでは農業者の努力が反映されないことから、数量払いと面積払いを併用した仕組みが導入された。(3)食料自給率向上や農業の多面的機能の維持に資する農業を行う経営体を育成・支援するため、畑作物の品質向上を促す品質加算、不作付地等の解消を目的とする再生利用加算、土地利用型作物の大規模化を促す規模拡大加算等の数種の交付金加算の仕組みが設定された。加算措置の導入は、地域の実情や経営努力の差異にかかわらず、一律的な補償を受けられるというモデル事業に対する批判を踏まえての政策的対応といえる。