世界貿易機関(WTO)設立後初めての多角的貿易交渉(新ラウンド)。正式名称はドーハ開発アジェンダ(Doha Development Agenda)。名称は2001年11月に新ラウンドの開始がカタールのドーハで合意されたことに由来する。WTOの前身であるGATT(関税と貿易に関する一般協定)時代のウルグアイ・ラウンド(1986~95年)などと同様に、鉱工業製品、農産物など多分野における世界規模の自由貿易体制の構築をめざす。2003年9月にメキシコのカンクン、05年12月に香港、09年11~12月、同年12月にそれぞれジュネーブで定例閣僚会議が開催され交渉が重ねられてきたが、12年1月時点で妥結のめどは立っていない。当初の交渉期限であった05年1月を優に越えても、いまだ決着していないのは、先進国と発展途上国間(および農産物の輸出国と輸入国間)の利害調整が困難を極めているからである。特に、(1)農産品の関税削減、(2)国内農業保護のための補助金削減、(3)鉱工業品および林水産品の関税削減の分野などで、両者の主張に大きな隔たりがみられる。11年12月のWTOの閣僚会議では、一括妥結を断念しないものの、当面は交渉進展が可能な分野について交渉を進めていくという議長総括が採択された。ドーハ・ラウンド交渉がこう着状態に陥っている中、世界各国において特定国・地域との自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の締結を通じて貿易拡大や他国との経済連携強化を図る傾向が強くなっている。環太平洋経済連携協定(TPP)の拡大もこの流れの中にある。