2011年5月10日に東日本大震災から漁業を早期に復興させるために宮城県において公表された構想。水産特区構想。この構想は、これまで漁協が都道府県知事から優先的に管理権を得ていた特定区画漁業権(養殖業を行う権利)を、知事が民間資本や技術を導入しようとする漁民会社(地元漁民主体の法人組織)に漁協を経由せずに直接免許しようとするものである。
特定区画漁業権が対象とする区画の中には、複数の小規模な漁民が養殖業(真珠養殖などを除く)を営むことが想定されていることから、区画内の漁場管理の権限は漁協に委ねられてきた。漁民らは漁協の中で、漁業権行使規則の作成など、秩序形成のための時間とコストをかけてきたのである。こうした漁民らが築きあげた漁場管理体制を特区構想は壊す可能性がある。
漁民らは特区構想に対して猛反発。約1万4000人の署名を集め、宮城県に対して構想を撤回するよう求めた。だが、その後の村井嘉浩宮城県知事と漁民代表との話し合いは平行線のまま、東日本大震災復興構想会議においてその委員を務めた宮城県知事らの強い主張が受け入れられ、構想は11年6月25日公表の「復興への提言~悲惨のなかの希望~」に、また、その3日後に公表された「水産復興マスタープラン」にも掲載された。そして11年12月26日に施行された復興特別区域法の第14条にその内容が条文化された。