漁港は、制度上(旧漁港法、漁港漁場整備法)では「天然又は人工の漁業根拠地となる水域及び陸域並びに施設の総合体である」とされているが、平たくいえば、漁船の集積地であり、水産資源の集荷地であり、水産資源を漁船から荷揚げし、都市部へ流通させるための物流拠点である。このような近代的な漁港の姿は19世紀初頭にイギリスで初めて登場したとされている。日本では明治後半以後ヨーロッパから近代的漁労技術の導入が始まると同時に、漁港を巡るハードとソフトのシステムが導入された。しかし、小規模から大規模まで混在する今日の漁港の姿は、戦後復興期に制定された旧漁港法と漁港整備長期計画に従って整備・改修・拡充されたものであり、その立地条件や管理する行政庁との関係から、次のように4つに種別されて整備されてきた。第一種漁港・その利用範囲が地元の漁業を主とするもの(2012年現在2200漁港)、第二種漁港・その利用範囲が第一種漁港よりも広く、第三種漁港に属しないもの(同499漁港)、第三種漁港・その利用範囲が全国的なもの(同101漁港)、第四種漁港・離島その他辺地にあって漁場の開発または漁船の避難上特に必要なもの(99漁港)、である。さらに第三種漁港の中で、水産振興上特に重要とされる漁港は政令で特定第三種漁港と定め、その用途に応じて整備が進められた。特定第三種漁港は13漁港あり、八戸(青森)、気仙沼(宮城)、石巻(宮城)、塩釜(宮城)、銚子(千葉)、三崎(神奈川)、焼津(静岡)、境港(鳥取)、浜田(島根)、下関(山口)、博多(福岡)、長崎(長崎)、枕崎(鹿児島)という、いわゆる水産都市に立地している。