日本では1970年代からクロマグロの養殖が細々と行われてきたが、2000年ごろから西日本各地で行われるようになり、生産量は短期間で跳ね上がった。その背後には、世界的にマグロの漁獲制限が強まってきたことがある。特に日本人が好み、最も高級魚種とされているクロマグロにおいては、資源枯渇の危機が叫ばれるようになっていることも影響していよう。しかし、養殖とはいえ、クロマグロの幼魚「ヨコワ」を漁獲し、それを育てるという方法がとられているため、継続的な再生産が約束されるものではない。しかも近年、日本近海のクロマグロの漁獲は不安定になっている。こうした事情と国際的な管理強化の潮流を受けて、日本政府はヨコワの乱獲が行われないような措置を12年10月にとることになった。その措置とは、養殖生け簀(す)内のヨコワの尾数が11年の状況以上に増えないよう、各県においてマグロ養殖漁場の新設を禁止し、漁業権に生け簀台数の制限や条件を設けることである。ただし、完全養殖など人工種苗のための漁場新設は対象外となった。