農業協同組合は、相互扶助の精神のもと組合員農家の農業経営と生活を守り、よりよい地域社会を築くことを目的とした協同組合である。農協の沿革は、産業組合法(明治33年(1900)交布)のもと設立された協同組合までさかのぼるが、より直接的には第二次世界大戦中の農業団体法に基づく農業会の改組である。農協の事業活動は、農業協同組合法(昭和22年(1947)制定)に基づき、組合員参加による自主的・民主的な運営を原則とし、(1)指導事業、(2)経済事業、(3)信用事業、(4)共済事業を主とする。(1)指導事業は組合員の農業経営・技術指導や生活に関する支援であり、(2)経済事業は生産資材や生活必要物資の共同購入と農産物の共同販売を中核とする。(3)信用事業は貯金・融資、(4)共済事業は様々な保険サービスを提供する。このほかにも、病院運営などの厚生事業や高年齢者施設運営などの福祉事業が展開されている。こうした事業のなかで信用事業と共済事業が、現在、農協の収益面で重要な位置を占めている。農家数の減少に伴い正組合員数が年々減少しているなか、逆に非農家である准組合員の数は増加の傾向にある。2009年度に正組合員と准組合員の数が初めて逆転し、以降、両者の差は拡大している。近年、農協の目的・制度と実際の活動の間の隔たりが大きくなっている点が問題視され、農協の改革を求める声が大きくなっている。