農地集積とは、地域の中心となる農業経営体に農地利用を集中させることを意味する。日本では農家1戸当たりの経営面積が小さく、かつ所有農地が分散していること(零細分散錯圃〔さくほ〕)が、機械の効率的利用等を阻み、国際的にみて高い農産物生産費の要因になっている。土地利用型農業の生産性の向上には、零細分散錯圃の解消が不可欠であり、農地集積はその一手段である。また、担い手への農地集積は、高齢化による耕作放棄地の拡大を抑制する等、農地保全に貢献すると期待されている。農地集積は、農地法の特例として措置された農地利用集積円滑化事業、農地保有合理化事業、利用権設定等促進事業により促進されている。主な実施主体は、市町村段階で設置される農地利用集積円滑化団体(市町村、市町村公社、農協等)と、都道府県段階で設置される農地保有合理化法人(都道府県農業公社)である。前者は農地所有者から農地の貸し付け等の委任を受け、意欲ある農業者に貸し付けを行い、後者は規模縮小農家等から農地を買い入れまたは借り入れし、意欲ある農業者に売り渡しまたは貸し付けを行う。公的機関が農地集積を仲介する利点として、農地集積に意欲のある農業者は多数の地権者と交渉する手間が省けること、公的機関が調整することで近所の農家に貸したくないなどの心理的抵抗感や軋轢(あつれき)が緩和されること等が指摘されている。