海外農業投資による大規模土地集積のことであり、多国籍アグリビジネスを筆頭に、企業、政府、ファンドが途上国の農地を争奪する様相をみせたため、ランドラッシュおよびランドグラブ(land grab 土地収奪)と表現される。2000年代後半に発生した食料価格の高騰を契機に、食料・農業生産に関する資源の確保と競合が世界的に加速し、より有限性の強い土地が争奪の対象となった。11年にNGOから公表された報告書において、アジア(5000万ヘクタール)、北米・中南米(4200万ヘクタール)、アフリカ(2700万ヘクタール)という規模での土地取引が行われており、ラオス、アルゼンチン、パラグアイ、マダガスカル、モザンビークなどでは耕地の半数以上が外資によって取得されている。こうした大規模土地集積を、大規模農業投資の呼び水や大規模農業での雇用創出、新技術の波及などのように途上国農業への貢献につながると捉える見解がある一方で、土地保有の権利が確立していない途上国では、土地集積の過程で農民が補償もなく強制的に排除されたり、大規模農場では低賃金労働者として不安定な状況に置かれたりと、住民の生存を脅かす人権侵害にあたるとの批判的見解も提示されている。