広義には、「都市とその近郊地域の農業」(農林統計における「都市的地域」)であり、狭義には「市街化区域とその周辺の農業」を指す。都市の急速な膨張により、都市近郊農業がスプロール化の影響を受けて市街地内部に取り残された結果(残地農業としての都市農業)、もしくは、都市開発の進行を踏まえて良好な都市環境を形成するために政策的に保全してきた結果(計画的に保全された都市農業)とされる。一般に、都市計画法上の市街化区域内で営まれる農業を都市農業と捉える傾向にあるものの、大都市の市街化調整区域で展開される農業も都市農業に含まれる。都市農業は、(1)新鮮で安全な農産物の供給、(2)身近な農業体験・交流活動の場の提供、(3)災害時の防災空間の確保、(4)やすらぎや潤いをもたらす緑地空間の提供、(5)国土・環境の保全、(6)都市住民の農業への理解の醸成といった多様な役割を果たしており、都市政策の面からも評価されつつある。ただし、都市農地、特に市街化区域内農地は、地価水準が非常に高いために、経営に対する税の影響に配慮した仕組みが設けられているものの、固定資産税や相続税の支払い負担が営農継続の大きな支障になっている。