社会や環境に適応しながら何世代にもわたり形作られてきた農業上の土地利用、伝統的な農業と、それに関わって育まれてきた文化、ランドスケープ、生物多様性などが一体となった世界的に重要な農業システムのことで、国連食糧農業機関(FAO)が認定している。2016年時点で、世界では15カ国36地域、日本では8地域が認定されている。「トキと共生する佐渡の里山」(新潟県佐渡市)、「静岡の茶草場農法」(静岡県掛川周辺地域)、「阿蘇の草原の維持と持続的農業」(熊本県阿蘇地域)のほか、石川県能登地域、大分県国東半島宇佐地域、岐阜県長良川上中流域、和歌山県みなべ・田辺地域、宮崎県高千穂郷・椎葉山地域といった里地里山を中心とした日本の伝統的な農業システムが世界的に評価されている。認定された地域は、生態系とうまく調和している小規模農業のモデルとして位置付けられており、日本では大規模農業化が政策的に推進されているものの、その一方で、日本の里地里山は世界的に再評価されつつある。また、13年にはユネスコ無形文化遺産に「和食」が選定されているが、豊かな食材を生み出す日本の「農」があってこそ、こうした文化的な「食」は支えられているのである。