排他的経済水域(EEZ)でのサケ・マス流し網漁を禁じたロシアの法律。2014年12月にロシア連邦議会に提出され、15年6月29日に成立した。1985年以後、日本とロシアは二つの協定に基づいて政府間協議を行い、日本のサケ・マス流し網漁船がロシア排他的経済水域(カムチャッカ半島東側や千島列島北東水域)に出漁していた。この漁業は、日本沿岸で漁獲される成熟したシロサケとは異なり、ベニザケなど沖捕りの高級サケを供給する。そうした中で、ロシア水域における流し網漁の操業を2016年1月より禁止にしようという法案が可決され、日本のサケ・マス流し網漁船は、15年が最後の出漁となった。ちなみに流し網漁の操業禁止は、産卵場所への回遊経路における遡河性魚種の保全を確保するためのもので、日本漁船を排除するためのものではない。ロシア漁船も含めて、流し網漁法が排除された格好である。しかし、あおりを受けた日本は小型船20隻、中型船18隻がロシア水域への出漁機会を失い、乗組員約500人、水揚量6000トン、水揚金額約30億円を喪失することになった。さらに水産加工・流通など、この漁業に関連する産業や、漁業基地だった根室市など地域への経済波及効果も含めると、経済的損失は185億円にのぼるとされた。日本政府はその後、100億円の予算を準備して、この事態に対する影響緩和のための「さけ・ます流し網漁禁止緊急対策」を実施した。