オフィス市場は住宅市場と比べると景気の動向に左右されやすく変動しやすい。住宅の場合需要の総量自体は景気ではなく人口、世帯数の変動により変化する要素が強いのに対して、オフィス床需要は景気の変動によって大きく変化するためである。サブプライムローン問題に端を発した金融危機による世界経済の低迷により、2007年ころをピークにオフィス床需要は減少し、空室率が上昇して賃料は下落したが、10年以降は回復傾向が読み取れる。すなわち、空室率は大阪、名古屋などでは10年以降低下し、東京は12年から低下し始める。賃料も東京において14年から上昇し始める。大阪と名古屋も15年に賃料の下落が止まり横ばいとなる。三鬼商事の「MIKIオフィスリポート」によって3大都市(東京、大阪、名古屋)のビジネス地区のオフィス市場の状況をみると、16年1月の空室率は東京が4.01%(前年1月5.36%)、大阪が7.27%(前年1月7.98%)、名古屋が7.18%(前年1月7.44%)であり、東京、大阪、名古屋ともに低下している。賃料はやや変動しており、16年1月の平均賃料は、東京が1万7790円/月/坪(前年同月比4.0%増)、大阪が1万1111円/月/坪(前年同月比0.02%減)、名古屋が1万796円/月/坪(前年同月比0.04%増)となっている。オフィス市場は空室率の低下傾向が続き回復しているが、賃料も大都市の都心のビジネス地区で下落が止まり、上昇し始める気配をみせている。今後も回復傾向が続くと思われるが、景気の動向に依存する。