超高層マンション(タワーマンション)の購入が相続税対策になるといわれている。これは、超高層マンションの高層階の販売価格は低層階よりかなり高い一方で、不動産の相続税評価額が一律である(階層によって評価額に差がない)ため、相続税評価がいわゆる時価より低くなることで生じる。これに関しては総務庁と国税庁は2016年秋ごろに、高層階のマンションを低層階のものより高く評価し、節税効果を薄めるように見直すことを検討している(18年以降適用の見通し)。それ以外の要因で不動産の相続税評価額が低くなる可能性があるので説明する。現預金を相続する場合はその額が評価額となり、上場株式であれば取引所が公表する課税時期の最終価格(その月の平均、前月の平均と前々月の平均の低い方)が評価額となるが、不動産の場合、上場株式市場のような市場は存在しない。不動産の相続税評価方式は土地の場合、路線価方式と倍率方式である。路線価とは路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額で、毎年相続税路線価が発表される。路線価は地価公示価格の8割を目安にしている。倍率方式は路線価のない地域の評価方式であり、固定資産税評価額の一定倍率で評価される。家屋の相続税評価額は固定資産税評価額と同じである。固定資産税評価額は「実際の建築費×(1-減耗率)」より低く(新築時では建築費の6割程度と言われている)、高級なものほどそれと評価額がかい離している可能性が大きいといわれている。以上から、いずれの方法でも不動産の評価額は一般に時価より低くなっている可能性が強い。さらに、マンションを賃貸に供した場合、相続税評価額は借家権価格相当分が控除される。すなわち、建物評価額に借家権割合(3割)を乗じた分と、土地評価額に「借地権割合(住宅地の場合6~7割)×借家権割合」を乗じた分が控除される。ただし、不動産市場は不完全であり、地価公示価格が時価を示している保証はなく、建物の価値も「実際の建築費×(1-減耗率)」で簡単に求められるわけではないことから、単純に時価を議論できないことに注意を要する。また、賃貸が相続税対策になるにしても、収益性を無視した投資は危険である。