2020年東京オリンピック・パラリンピックの主会場となる新国立競技場(東京都新宿区および渋谷区)は、設計・施工の一括公募の結果、2015年12月、隈研吾らが設計した案に決まった。審査で明暗を分けたのは、コスト縮減と工期短縮の実現性が重視された結果だと言われる。総工費は1490億円と、白紙撤回されたザハ・ハディド設計の旧案より約1000億円縮減されたが、当初案の1300億円に比べればまだ高い。工期は36カ月(16年12月着工、19年11月末完成予定)、地上5階・地下2階、高さ49.2メートル、延床面積19万2363平方メートル、収容人数約6万人(大会時)・車椅子席約450席。デザインは、木と鉄を組み合わせた屋根構造が象徴的な緑のスタジアムで、外観は法隆寺の五重塔の垂木を想起させる水平ラインのひさしが特徴である。新国立競技場は、東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式、陸上、サッカー競技で使用される予定で、アスリートの立場からは、サブトラックの充実や芝生の管理が要望されている。また、大会後には施設運営の民間委託への道筋をつけることが重要であり、現在、球技専用にする方向で考えられている。ただし、球技専用に改修する際に、3層のスタンドからなる構造について、通常であれば1階席のスタンドで観戦しやすいとされる傾斜角が35~40度であるのに対し、改修後の新国立競技場では10度台での観戦を強いられることになり、問題となることが予想される。