不動産市場とは不動産の取引に関する市場全般を言うが、取引の対象が権利かサービスかによって、不動産売買市場、不動産賃貸市場に区分され、または取引対象の用途から住宅市場と商業不動産などの非住宅市場に区分される。不動産売買市場、不動産賃貸市場と金融市場は密接に結びついている。過剰流動性を背景にした1980年代後半の異常なバブルが崩壊して以降十数年にわたって低迷した不動産市場は、不動産証券化が成立し、J-REIT(不動産投資信託)が上場された2001年9月から、ファンド(J-REITおよび私募ファンド)を通じて資金が不動産市場に流入し、市場が活性化した。特に05年ころから大都市の都心地域でファンドバブルが発生した。しかし、08年にサブプライムローンに端を発した未曾有(みぞう)の金融危機が発生し、J-REIT、私募ファンドなどを通じた不動産市場への資金の流入(需要)の激減によって不動産価格を下落させるとともに、経済の低迷、賃貸床需要の減少から、オフィス市場で空室率の上昇と賃料の下落をもたらした。
12年以降不動産市場は回復傾向にある。14年以降3大都市圏、地方中核都市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)の地価はわずかに上昇に転じている。住宅の着工戸数は増加しており、09年に80万戸を割り込むが、その後回復し13年度に100万戸に迫り、14年度、15年度はそれぞれ90万戸前後となるが、16年度97万戸と100万戸に迫る。オフィス市場は空室率が11年以降低下し、東京が3%の低い水準になる一方で、大阪が3%台になるなど回復傾向にある。そして08年以降下落を続けていた賃料も、14年以降東京ビジネス地区において上昇し始める。しかし、不動産の価格が上昇している地域は投資対象として魅力の地域である大都市圏、地方中核都市の都心に限られる。そして訪日外国人客数の急増も、大阪なんばなど地域は限定されるが、不動産価格に影響を与えている。